コミュニケーショングループ

コミュニケーショングループとは

Beyond 5Gに向けて様々なワイヤレス機器・サービスの登場が予想される中,周波数資源の逼迫が問題となりつつあります. 現在普及しているシステムで採用されている半二重通信に対し,全二重通信は理論上2倍の周波数利用効率を達成でき,次世代無線システムの複信方式として期待されています. しかし,同一周波数帯で同時に送受信を行う無線全二重通信では,自分が発した信号が相手からの信号に混じって受信されます. このことを自己干渉といい,無線全二重通信を実現するためには自己干渉を熱雑音レベルまで除去する必要があります. 現在,コミュニケーショングループでは,ハードウェア・ソフトウェアコストが制限された安価な端末に搭載可能で,かつ,高性能なディジタル自己干渉キャンセラの研究を行っています.

半二重vs全二重

単語帳
半二重通信全二重通信自己干渉アンテナ自己干渉抑制アナログ自己干渉除去ディジタル自己干渉除去ディジタルプリディストーションPAPR低減

半二重通信

双方向の通信において時間または周波数の資源を分割して送受信する方式を半二重通信といいます.時間を分割する方式を時分割複信,周波数を分割する方式を周波数分割複信といいます.

全二重通信

双方向の通信において時間または周波数の資源を分割せずに送受信する方式を全二重通信といいます.全二重通信は同一周波数帯で同時に通信を行うため,半二重通信と比較して周波数利用効率とスループットの向上が見込まれます.

自己干渉

無線全二重通信では,送信した信号を同一端末で受信してしまい,本来の通信を妨げてしまうことが大きな問題となります.これを自己干渉信号といい,無線全二重通信の実現には十分な自己干渉の低減が必要不可欠です.

アンテナ自己干渉抑制

アンテナの物理的構造によって,自己干渉そのものを極力発生させない技術.
ex) 送信方向の調整,寄生素子の追加 など

アナログ自己干渉除去

アナログ回路によって自己干渉信号を再現し,打ち消す技術.
ex) 逆位相信号の加算,帯域通過フィルタによる高周波成分の除去 など

ディジタル自己干渉除去

ディジタル信号処理によって自己干渉信号を再現し,打ち消す技術

ディジタルプリディストーション

電力増幅器の高調波歪みをディジタル信号処理によって補正する手法です.増幅器の非線形特性を補償することで,出力を線形化することを目的としています.

PAPR低減

平均電力と比較して非常に大きな電力を持つ信号の電力を小さくするための技術.

ディジタル自己干渉除去

  • ディシタルプリディストーションと自己干渉除去
  • 自己干渉信号は所望信号の復調を阻害するため,自己干渉除去量は大きいことに越したことはありません. 本研究室ではディジタル自己干渉除去の性能限界を理論的に解析し[小松H30], ディジタルプリディストーションを用いて送信機の特性を操作することで除去量の向上 [ChuaH31][佐藤R3]を試みています. 更に,全二重通信における通信性能が最大となるように,実現可能な計算量でディジタルプリディストータを最適化することを試みています[佐藤R4]

  • PAPR抑制と自己干渉除去
  • ディジタル自己干渉キャンセラでは電力増幅器の非線形増幅によって自己干渉除去性能が劣化します. また,現在,無線通信で使用されているOFDM信号はピーク対平均電力比(Peak to Average Power Ratio: PAPR)が高いため,送信機の電力増幅器で非線形増幅されやすいです. そこで,PAPR低減手法の1つであるコンパンディングやクリッピングを信号に適用し,自己干渉除去量を評価しています[岡野R3]. また,OFDMよりもPAPRの低いシングルキャリア変調方式を用いた全二重通信の検討も行なっています[山本R3]

  • 自己干渉除去の計算コスト削減
  • 従来のディジタル自己干渉除去では膨大な計算量が必要であり,小型で安価な無線端末への応用が難しいと考えられます. そこで従来よりも計算量が少なくてすむ自己干渉除去の手法を検討しています[金丸R3][柄澤R5]

    また,無線通信機を長時間動作させると,時間の経過に伴う発熱により素子の電気的特性が変動します. 素子の特性が変動した場合,自己干渉キャンセラの再学習を行う必要があります. 本研究室ではキャンセラの再学習を工夫し,計算コストの削減を試みています[石井H31].

実機(USRP)による手法の性能評価

Reference

[轡見H28]: 轡見眞太朗, 宮路祐一, 上原秀幸, “広帯域な自己干渉抑制を達成する寄生素子を用いたアンテナ構成,” 信学技報, vol. 116, no. 317, AP2016-107, pp. 1-5, 2016年11月.
[福井H30]: 福井崇久, 宮路祐一, 上原秀幸, "帯域内全二重におけるアナログ自己干渉除去のための補助送信機のUSRPによる実装," 信学総大, B-5-95, Mar. 2018.
[小松H30]: 小松和暉, 宮路祐一, 上原秀幸, “非線形自己干渉キャンセラのためのラゲール陪多項式を用いた理論的性能解析,” 信学技報, vol. 118, no. 311, RCS2018-194, pp. 97-102, 2018年11月.
[小網H30]: 小網敦, 宮路祐一, 上原秀幸, "全二重通信における干渉除去がビット誤り率に与える影響," 信学ソ大, B-5-107, Sep. 2018.
[ChuaH31]: Chua Teong Zhe, 小松和暉, 宮路祐一, 上原秀幸, "帯域内全二重におけるRappモデルによる電力増幅器の非線形歪みと自己干渉除去の性能向上に関する検討," 信学ソ大, B-5-85, Sep. 2019.
[石井H31]: 石井建至, 小松和暉, 宮路祐一, 上原秀幸, “増幅器の利得変動に対処した自己干渉キャンセラの部分的再学習,” 信学技報, vol. 119, no. 296, RCS2019-215, pp. 73-78, 2019年11月.
[岡野R3]: 岡野公太, 小松和暉, 宮路祐一, 上原秀幸, "帯域内全二重におけるコンパンディング法のパラメータの最適化," 信学技報, vol. 121, no. 234, RCS2021-145, pp. 13-18, 2021年11月.
[佐藤R3]: 佐藤栄作, 小松和暉, 宮路祐一, 上原秀幸, "帯域内全二重のためのディジタルプリディストータとネルダーミード法を用いた送信機の非線形化," 信学技報, vol. 121, no. 329, RCS2021-196, pp. 1-6, 2022年1月.
[山本R3]: 山本魁世, 宮路祐一, 上原秀幸, "帯域内全二重におけるFSK,PSKの実験による自己干渉除去性能の評価," 信学総大, B-5-122, 2022年3月.
[金丸R3]: 金丸紘基, 宮路祐一, 上原秀幸, "帯域内全二重における時間領域及び周波数領域キャンセラの実機実験による除去性能評価," 信学総大, B-5-121, 2022年3月.
[佐藤R4] 佐藤栄作, 小松和暉, 宮路祐一, 上原秀幸, “帯域内全二重のためのディジタルプリディストータとネルダーミード法を用いた送信機の非線形化,“ 信学技報, vol. 121, no. 329, RCS2021-196, pp. 1-6, 2022年1月. [優秀発表賞受賞]
[柄澤R5] 柄澤幸太郎, 山本魁世, 佐藤栄作, 上原秀幸, "帯域内全二重無線におけるコンパンディングを用いた周波数領域自己干渉キャンセラ," 信学総大, B-5-106, 2023年3月.