コミュニケーショングループ

コミュニケーショングループとは

現在,コミュニケーショングループでは通信速度の向上を目指し,無線全二重通信に関する研究を行っています. 同一周波数帯で同時に送受信を行う無線全二重通信では,自分が発した信号が相手からの信号に混じって受信されます. このことを自己干渉といい,無線全二重通信を実現するためには自己干渉を低減する必要があります. そこで,私達はアンテナ構造とディジタル信号処理という2つの手段で自己干渉を低減する方法を研究しています.

単語帳
半二重通信全二重通信自己干渉アンテナ自己干渉抑制アナログ自己干渉除去ディジタル自己干渉除去マルチホップ通信ディジタルプリディストーション

アナログ自己干渉除去

帯域内全二重において,受信機の飽和を防ぐために必要となるのがアナログ自己干渉除去です. 本研究室ではこれまでに広い帯域幅で高い自己干渉の抑圧を達成する指向性アンテナに関する研究をしてきました[轡見H28] 現在はディジタル信号処理を利用して高周波の自己干渉信号を相殺する技術について研究を進めています. この手法では,送信機と受信機のほかに,補助送信機と呼ばれる追加の送信機を利用します. 補助送信機から出力される信号を,受信される自己干渉信号と同振幅で逆位相にすることで,自己干渉信号を相殺できます. 実際にソフトウェア無線フロントエンドの一つであるUSRPを利用して,この手法の実証実験を行っています[福井H30]

2016年度に作製したアンテナ

ソフトウェア無線を利用したアナログ自己干渉除去技術の実証実験

ディジタル自己干渉除去

  • ディシタルプリディストーションと自己干渉除去
  • 自己干渉信号は所望信号の復調を阻害するため,自己干渉除去量は大きいことに越したことはありません. 本研究室ではディジタル自己干渉除去の性能限界を理論的に解析し[小松H30],ディジタルプリディストーションを用いて送信機の特性を操作することで除去量の向上[ChuaH31]を試みています.

  • PAPR抑制と自己干渉除去
  • ディジタル自己干渉除去手法の1つである線形自己干渉キャンセラは,低計算量で除去ができますが,非線形増幅によって自己干渉除去性能が劣化します. また,現在,無線通信で使用されているOFDM信号はピーク対平均電力比(Peak to Average Power Ratio: PAPR)が高いため,送信機の電力増幅器で非線形増幅されやすいです. そこで,PAPR低減手法の1つであるコンパンディングを信号に適用し,自己干渉除去量を評価しています[岡野R1]

  • 時変を考慮した自己干渉除去
  • 無線通信機を長時間動作させると,時間の経過に伴う発熱により素子の電気的特性が変動します. 素子の特性が変動した場合,自己干渉キャンセラの再学習を行う必要があります. 本研究室ではキャンセラの再学習を工夫し,計算コストの削減を試みています[石井H31].

実機(USRP)による手法の性能評価

マルチホップ全二重通信

本研究室ではこれまでにマルチホップ通信に関する研究を行ってきました. また,全二重通信とマルチホップ通信を組み合わせたマルチホップ全二重通信の研究もMAC層の領域で進められています. マルチホップ全二重通信は情報をパイプライン的に伝送することで半二重端末によるマルチホップ通信よりも高いスループットと良好な遅延特性を示すことがわかっています. そこで,これらの研究の実機実証としてマルチホップ全二重通信をソフトウェア無線に実装し,その評価を行っています[小網H30]

Reference

[轡見H28]: 轡見眞太朗, 宮路祐一, 上原秀幸, “広帯域な自己干渉抑制を達成する寄生素子を用いたアンテナ構成,” 信学技報, vol. 116, no. 317, AP2016-107, pp. 1-5, 2016年11月.
[福井H30]: 福井崇久, 宮路祐一, 上原秀幸, "帯域内全二重におけるアナログ自己干渉除去のための補助送信機のUSRPによる実装," 信学総大, B-5-95, Mar. 2018.
[小松H30]: 小松和暉, 宮路祐一, 上原秀幸, “非線形自己干渉キャンセラのためのラゲール陪多項式を用いた理論的性能解析,” 信学技報, vol. 118, no. 311, RCS2018-194, pp. 97-102, 2018年11月.
[ChuaH31]: Chua Teong Zhe, 小松和暉, 宮路祐一, 上原秀幸, "帯域内全二重におけるRappモデルによる電力増幅器の非線形歪みと自己干渉除去の性能向上に関する検討," 信学ソ大, B-5-85, Sep. 2019.
[岡野R1]: 岡野公太,小松和暉,宮路祐一,上原秀幸, " 帯域内全二重におけるPAPR低減手法によるディジタル自己干渉除去の性能改善," 信学総大,B-5-133, Mar. 2020.
[石井H31]: 石井建至, 小松和暉, 宮路祐一, 上原秀幸, “増幅器の利得変動に対処した自己干渉キャンセラの部分的再学習,” 信学技報, vol. 119, no. 296, RCS2019-215, pp. 73-78, 2019年11月.
[小網H30]: 小網 敦, 宮路祐一, 上原秀幸, "全二重通信における干渉除去がビット誤り率に与える影響," 信学ソ大, B-5-107, Sep. 2018.