生体ワイヤレス給電グループ

ペースメーカや脊髄刺激デバイスといった体内埋込型医療機器を必要とする患者はバッテリ交換のための手術や,体外からの電気配線による電源確保といったように身体的・精神的に非常に大きな負荷を有してきました.このような患者のQoL(Quality of Life)を向上させるため,体外から体内埋込型医療機器へのワイヤレス給電技術の研究を行っています.

私たちは日常生活を送りながら体内埋込型医療機器を充電できるよう,フィルム電極上に給電回路や送電器を搭載した電界方式のシステム開発を進めています.給電は皮膚,皮下脂肪,筋肉と複数の生体組織を介することになりますが,各組織の厚みは面内バラツキを持ちます.さらに筋細胞外脂肪などを有すためきれいに皮膚,脂肪,筋肉と切り分けることはできません.そこで,自分たちで皮膚表面から体内埋込型医療機器表面までの複素誘電率を測定し,独自に構築した高精度等価回路を用いてシステム設計を行っています.

小型電池,給電回路,送電器を体表に貼り付けて体内埋込型医療機器へ給電し,充電が終わったら剥がして捨てることができるディスポーサブルなデバイスの実現を目指しています.これにより,24時間いつでも,どこでも,充電できるデバイスの提供が可能となります.

これまでに給電経路上の多重生体組織の複素比誘電を測定し,このデータをもとに送受電電極を設計し,電界方式ながら「IEEE C95.1 2019 電波防護指針人体防護指針」を順守した上でペースメーカを駆動できる電力の給電を実現しました.現在,更なる効率改善や発熱を抑えた送電電源回路などを研究しています.


主な成果